
法人の経営者の方であれば、役員報酬の設定について悩まれたことが少なからずあるかと思います。一般従業員の給与手当とは違い、ある意味自由に、柔軟性をもって決めることができるように感じますが、実際のところ、そう簡単には決められません。役員報酬の決定は、法的な規定や企業のガバナンスに基づいて行う必要があり、また、税務上の経費として認められるためには運用上の取り決めを遵守する必要があります。


役員報酬の金額について
まず、役員報酬の金額については合理性・適正性が求められます。報酬が事業規模や経営状況に対して合理的であることが必要であり、例えば、売上や利益が少ない会社が高額な役員報酬を支払っている場合、「過大な報酬」と見做され、税務上、経費として認められない可能性があります。新規設立法人等でまだ実績がない場合は、同業他社や業界の相場を参考に金額を決定するのもいいでしょう。また、役員の職務内容や責任の重さに応じて適正でなくてはいけません。通常、代表取締役には、他の取締役よりも高い報酬が支払われます。

役員報酬の決定方法について
次に、決定方法についてですが、役員報酬は口頭や非公式なもので決定するのはなく、法人と役員との間での正式な契約や取締役会決議に基づいて決める必要があります。また、株主総会での承認が求められる場合が多いので、株主総会を開催する前に役員報酬を決定し、株主総会での議案として承認を得るという流れが一般的です。なお、定時株主総会は事業年度終了後3ヶ月以内に開催しなければなりません。例えば12月決算の法人であれば翌年3月31日までに開催する必要があります。つまり役員報酬の金額ついてもそれまでに決定・承認を終え、その後は実際にその支給をしなければいけません。また、新規設立法人においては設立登記後すぐに決定する必要があります。

役員報酬の支給方法について
さらに、支給方法についても税務的な取り決めがあります。役員報酬は一時的に支払うのではなく、毎月一定の日に同じ金額を支払わなければなりません。これを『定期同額給与』といいます。役員報酬の金額を、業績の良し悪し等を理由に期中に変動させた場合、税金逃れのための行為と見做され、税務上の経費として認められない可能性があります。株主総会において承認された役員報酬は通常、その後1年間は変動させることができず、毎月同額を支給しなくてはいけません。


これら要件をまとめますと、役員報酬の金額は『一定期日までに、正式に適正金額を決定し、その後1年間は決めた通りに毎月支給しなければいけない』ということになります。先々の利益状況や資金繰り等を予測・勘案する必要もあり、なかなか容易なことではありません。
また、役員報酬は当然、受け取る方にとっては所得となりますので、所得税や住民税、社会保険料の金額へも影響します。最終的な決定をする前に税理士等専門家の意見を参考にすることをおすすめいたします。