給与計算は、企業運営において非常に重要な業務のひとつです。従業員が正確な給与を受け取るためには、計算ミスや記録漏れを防ぐことが不可欠です。給与計算初心者がまず理解しておくべき基本的な用語を20個に絞り、わかりやすく解説します。
1. 締め日(しめび)
給与計算の対象となる期間の最終日を指します。たとえば、1日から月末までの月末締めや、20日締めなど、企業によって異なります。この日以降の勤務分は、翌月の給与に反映されます。給与計算の重要なポイントです。
2. 支給日(しきゅうび)
実際に給与が支払われる日です。給与は月1回以上、一定の期日を定めて支給しなければなりません。この日までに正確な給与計算が完了している必要があります。
3. 休憩時間(きゅうけいじかん)
休憩は、①労働時間の途中に付与する ②一斉に付与する ③自由に利用させる、3つの原則ルールがあります。労働時間に併せて、休憩時間の長さが変わります。
労働時間6時間以下:与えなくともよい
労働時間6時間を超える:少なくとも45分 労働時間8時間を超える:少なくとも1時間
4. 基本給(きほんきゅう)
従業員に対する給与の基礎となる金額です。残業手当や各種手当を含まない、純粋な賃金部分で、給与計算の基準となる重要な項目です。従業員ごとに異なるため、正確に把握することが必要です。
5. 時間外労働手当(じかんがいろうどうてあて)
法定労働時間を超えて行われる労働のことです。労働基準法では休憩時間を除き、1日8時間または週40時間(特定事業は週44時間)を超える労働が時間外労働に該当し、割増賃金を支払う義務があります。残業時間に応じて、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の25%以上の割増が必要です。
6. 深夜勤務手当(しんやきんむてあて)
午後10時から午前5時までの労働に対して支給される手当です。労働基準法では、深夜勤務に対して通常の賃金に加えて25%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられています。
7. 法定休日手当(ほうていきゅうじつてあて)
法定休日(毎週少なくとも1日)に出勤した場合に支給される手当です。法定休日に働いた場合、35%以上の割増賃金が適用されます。
8. 遅早控除・欠勤控除(ちそうこうじょ・けっきんこうじょ)
従業員が予定した労働日に遅刻・欠勤した際に、その時間・日数に応じて給与から差し引かれる金額のことです。従業員が正当な理由なく出勤しなかった場合や、有給休暇を使わずに休んだ場合に、この控除が適用されます。
会社側は、就業規則に基づいて正確に控除額を計算し、従業員に対しても事前に控除ルールを明確にする必要があります。
9. 通勤手当(つうきんてあて)
従業員が通勤にかかる交通費を補助するための手当です。交通機関や有料道路での通勤手当は非課税ですが、一定の金額(15万円)を超えると課税対象となります。給与計算時には、非課税枠に注意して処理を行います。
10. 総支給額(そうしきゅうがく)
総支給額は、基本給や各種手当をすべて合計した金額です。控除が差し引かれる前の金額で、給与明細の支給項目に記載されています。
11. 社会保険料(しゃかいほけんりょう)
従業員が加入する社会保険制度に対して支払う保険料です。健康保険や厚生年金保険、介護保険、雇用保険料が含まれ、従業員の給与から控除されます。保険料率等に気をつけ、反映させることが必要です。
12. 雇用保険料(こようほけんりょう)
従業員が失業時に給付金を受け取るために支払う保険料です。従業員の給与から控除され、事業主も一部負担します。雇用保険料率は年ごとに変動するため、最新の情報を基に計算することが重要です。
13. 所得税(しょとくぜい)
従業員の給与に対して課される税金で、毎月の給与から源泉徴収されます。年末には年末調整によって過不足が調整され、納めるべき正確な税額が確定します。
14. 税扶養控除(ぜいふようこうじょ)
扶養家族がいる場合に、所得税の控除が受けられる制度です。16歳以上の扶養親族が多いほど、税金の負担が軽減されます。給与計算時に扶養控除申告書を基に正確に控除を行います。
15. 住民税(じゅうみんぜい)
前年の所得に基づいて計算され、居住している都道府県や市区町村に支払う税金です。給与計算において、住民税の控除は「特別徴収」により自動的に行われます。
16. 住民税特別徴収(じゅうみんぜいとくべつちょうしゅう)
従業員の給与から住民税を天引きし、会社が従業員に代わって納付する制度です。給与計算において、特別徴収額を正確に控除することが求められます。
自治体が前年の所得をもとに算出し、決定した住民税の税額を通知する書類である「住民税決定通知書」が毎年5~6月頃に事業所へ届きます。
17. 差引支給額(さしひきしきゅうがく)
給与から税金や社会保険料などの控除を差し引いた後に、実際に従業員の手元に支払われる金額のことです。いわゆる「手取り額」に相当します。
例を挙げると、総支給額が30万円で、社会保険料や税金で5万円控除される場合、差引支給額は25万円となります。この金額が実際に労働者に支給する金額です。
18. 賞与(しょうよ)
一般的にボーナスとも呼ばれ、通常の給与とは別に支給される特別な報酬です。賞与にも社会保険料や所得税がかかり、計算方法が異なる場合もあります。
19. 賃金台帳(ちんぎんだいちょう)
各従業員の給与に関する記録を詳細に記載した帳簿です。給与計算の結果を正確に記録し、従業員ごとの賃金支払状況を管理するために使用されます。この書類は5年間(当分の間は3年間)保存しなければなりません。
20. 年末調整(ねんまつちょうせい)
その年の給与や控除額に基づいて、従業員の所得税の過不足を調整する作業です。これにより、過剰に徴収された税金が還付され、不足している場合は追加で徴収されます。年末に行われる給与計算の大きなイベントです。
給与計算初心者が知っておくべき基本用語20を紹介しました。これらの用語をしっかりと理解し、給与計算業務に活かすことで、従業員が正確に給与を受け取るための基盤を作ることができます。給与計算は細心の注意と正確性が求められる作業です。ぜひこのコラムを参考に、正確な給与計算を行いましょう。