
役員に毎月支給される定期の同額給与は、1年間を通して毎月同額の報酬を支給することによって経費に出来る制度です。この制度とは違い、事前に届出をすることによって役員の賞与的な報酬を支給しても経費に出来るのが事前確定届出給与という制度です。


制度を利用する際のルール
① 事前に支給日と支給額を決定しておくこと
(届出書に支給日と金額を記入する欄があります)
② 期限内に事前確定届出給与の届出書を税務署に提出すること
(通常この届出給与を決議した株主総会から1ヶ月以内又は会計期間開始の日から4月を経過する日のどちらか早い日が提出期限となります)
③ 届出に記載した支給日に支給額を払うこと


事前確定届出給与を出すメリット
① 役員賞与が損金になる
(法人税の節税が期待できます)
② 社会保険料の節約が期待できる
年間の役員報酬の総額を変えずに毎月の定期同額給与の金額を抑え、賞与金額を増やすことにより毎月の社会保険料の金額を減らすことが出来る可能性があります。社会保険料の計算では賞与に対する社会保険料には上限が設けられていますので、賞与の割合を増やすことで全体的に社会保険料の負担が軽くなるということです。


事前確定届出給与のデメリット
① 社会保険料を抑えているので、将来の年金や傷病手当金等が少なくなる
② 退職金が少なくなる
(実務上、役員退職金は退職時の月額給与を用いて計算される仕組みとなっています)
③ 所得税が増える可能性がある
(社会保険料は、所得税を計算する過程で差引できる金額になります。毎月の社会保険料が軽減されることにより、差引できる金額が少なくなり、所得税を計算する原資が大きくなってしまいます。)
④ 事前確定届出給与の支給日と金額を前もって決めて届出を提出しなければいけない
(〇月〇日に〇〇〇円の事前確定給与(賞与)を出すと株主総会で決議され届出を提出すると、支給日や支給金額に相違がある場合に損金になりません。)


事前確定届出給与は法人税の節税及び社会保険料の節約につながります。しかし、上記に示しましたようにメリット・デメリットがございます。この事前確定届出給与を取り入れようとするには、適切な報酬額の設定等が重要になってきますので、是非ご相談いただければと思います。